水上勉は福井県出身の作家である。貧困のため、9歳で京都の禅寺
水上勉は福井県出身の
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に小僧として出された。その後、寺を出奔し、様々な職業を経験し
ながら作家になった苦労人だった。
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だからこそ水上が描くのは、貧しいがゆえに過酷な運命に
作家である。貧困のため、戻る2
翻弄され
てゆく、哀しい男やあわれな女の人生である。
9歳で京都の禅寺、戻る4
二木まつのは、小杉から手紙をもらった。自分は悪い男だ。あなたが
が生娘と知らず、久野川の相手をさせてすまなかった、と心から詫
びていた。
まつのは金沢へ買い物に出た時に、小杉の会社を訪ねた。不在だっ
たので、手紙の住所を頼りに犀川を渡った。
(急流の思い)
「欄干によって、大川の流れを見た。かなりな急流だった」
11月2日、ちょうど今頃の季節である。犀川大橋の下を流れる水
は、深い緑色で、ゆったりと流れているように見える。まつのの目
に急流と映ったのは、小杉に会いたいという思いが、急激に強まっ
たからだろう。
小杉は、幸町のうら淋しい下宿で
小杉は、幸町のうら淋しい下宿で
小杉は、幸町のうら淋しい下宿で寝ていた。驚く小杉に、手紙をも
らったら会いたくなった。おかげで父の病院代ができた。恩に着て
いる、とまつのは礼を言う。「あんたは、きれいな心を持ってる人
や。まだ、心は生娘や」
寝ていた。驚く小杉に、手紙を、戻る1
小杉は大きく顔をゆがめて、半泣きのような顔をした。
どんな境遇に落ちても純真さを失わないまつのに、世間ずれした小
杉の心が溶かされてゆく。淋しくて孤独な2人は、互いにそうとは
気づかず、惹かれあったのである。
小杉は脱走兵だった。行方を追う憲兵に、律子は、まつのが小杉に
だまされて身を売ったことを話した。憲兵は小杉を娘売りの犯罪者
に仕立て、追い詰めて行く。
まつのは被害者として顔写真が新聞に載り、片山津を追われた。
帰る場所は実家しかない。
帰る場所は実家しかない。
帰る場所は実家しかない。鵜川の父母はまつのの帰郷に驚き、喜ん
だ。まつのが送った金で、父は治療し、歩けるようになっていた。
鵜川の父母はまつのの帰郷に、戻る2
暗い二木家に明るい光が差したのだ。
この家に、まつの宛ての手紙が届いていた。小杉からだった。
(人間の深みをえぐる)
久能川に脱走兵と知られた負い目から、あなたを世話した。自分の
生まれた山村にも、貧しい家を背負って働く女友達もたくさん知っ
ている。どうかゆるして下さいと、悔恨と死を匂わせる言葉がした
ためられている。
小杉も貧しい山村生まれ
小杉も貧しい山村生まれ
小杉も貧しい山村生まれだった。ここに、わずか9歳で修行の厳し
い禅寺へ入れられた水上勉の生い立ちが色濃く反映されている。水
上少年が味わった孤独や哀しみは、やがて小説となって、人間の深
ここに、わずか9歳で修行の、戻る3
みをえぐり出して結実してゆく。
「あかね雲」は2人の悲恋物語ともいえるが、読後、ぬくもりのあ
る余韻が心地いい。